ピューター皿の特集。
まずはスタンダードなリム皿から。

ピューターは錫を主成分とした合金。
製作された時代や個体で添加された成分も異なり、印象は大きく変化します。

このピューター皿はどうでしょう、鉛が若干多めの雰囲気があり、重厚さもありながらも柔らかさを備えています。


大きさは普段使いには丁度いいもの。
色味や痕跡もそれなりの味わいがあり、はじめてピューター皿に触れるという方にもお勧めです。

裏面にはFとGのイニシャル。依頼者か製作者によるものと思います。





① ピューター皿 フランス 19世紀前半 22.5cm径 2cm高

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2枚目の紹介も同じくフランスのリム皿。

1枚目とほぼ同形ですが、縁の立ち上がりの角度は強めに上に出ています。
こちらの方は成分の影響により硬質で若干軽い手取り。

製作年代は①よりも少し時代の下る19世紀の作と思います。

お皿と紹介しましたが、このタイプの形状は本来の用途は受皿(トレイ)であったものも多いようです。
同素材の蓋付ボトルを上に乗せて、それにワインや酒類を入れていたのをピューターの図録などで見ることができます。


とりわけ特徴のあるピューターではないですが、普通さが魅力の日々使えるピューター皿だと思います。






② ピューター皿 フランス 19世紀 22.2cm径 2.3cm高
価格 6,000円 (税込)






3枚目も同じくリム皿ですが、産地はフランス或いはベルギーと思われます。

上記の2枚よりも幾分大きさがあり偏平です。
絶妙なリム幅と立ち上がりが、美しい立体感を持つピューター皿。

ヨーロッパの古いピューター皿は、前所有者やディーラーによっては数百年を経た鈍色の表情を落として、丁寧に磨いてしまう人もいます。
美意識も色々、制作当時の煌びやかなピューターへの憧れもあってのことでしょう。

全体的に表面を若干、磨かれて光沢が出ていますが、むしろ惹かれてしまった色と艶でした。

磨いてから、また年月が経過していることも理由の一つに挙げられますが、美しいリム形と響き合っている肌合いの気がします。









③ ピューター皿 フランス或いはベルギー 18-19世紀
23.8cm径 1.7cm高
価格 8,500円 (税込)







同形のリム皿で最後に紹介するのは、紋章の手彫りされたピューター皿。
これまでの4枚の内では一番古手です。

小傷と深い黒鈍色の織りなす景色は時間の堆積した証し。
薄造りで柔らかく、鉛を多く含んだ軽い手取りです。

漫画的でゆるいクローバーの紋章が、渋い金属味にあると一際また可愛く見えてきます。











④ ピューター皿 フランス 18世紀 23cm径 1.5cm高

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5枚目は八角形のピューター皿。

縁に丸点を繋いだパール装飾がある八角皿はフランスでも時折見かけますが、線装飾のみとなるとあまり見られません。

両面の傷や欠損を埋めて修復した箇所が幾つもあり、貴重な器であることがうかがえ、またその直した痕跡も、現在では滑らかになって見どころに変わっています。

Londonの刻印がありますが、なんと意外にも必ずしもイギリス製という確証にはならないようです。
アメリカを中心としてその他の地方でも、London刻印の打たれたピューター皿が制作されていた過去があり、産地特定は困難なようです。
“London”の銘にピューター最大産地への憧れが浮かんできます。

詳細は不明であれど、エッジの効いた鈍色の八角形は魅力があります。









⑤ ピューター八角皿 産地不明 1746年刻印 29cm径 2cm高

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6枚目と7枚目はスープ皿風の深皿。

裏を返すと、ピューター皿には珍しく高台が付いています。
貫通した穴が開けられているのは、恐らく紐を通して台所などに掛ける為。絵皿でもないので、鑑賞したというより、きっと実用を兼ねて、ですね。

2枚共に、裏面は長い時間を経て鈍色に変化しており、表面は磨かれています。

薄造りで歪みもありますが、軟らか過ぎることはなく形を保っています。








⑥ ピューター深皿 ベルギー 18世紀 20cm径 3cm高
価格 9,000円 (税込)











⑦ ピューター深皿 ベルギー 18世紀 20.2cm径 2.7cm高
価格 9,000円 (税込)






使い勝手の良い六寸の深皿。
このサイズ感のピューター皿は、盆の上やテーブル上でも取り合わせ易く、昔からとても好みの大きさですが、数も少なく出会うのも稀です。
器体は分厚く、重みがあります。

ひっくり返すと帽子の形。
古手の幅広リム皿は「枢機卿の帽子」「僧上の帽子」と呼ばれることもあります。









⑧ ピューター六寸深皿 フランス 18世紀 18.5cm径 2.9cm高

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今回のピューター特集の中では形が一番気に入っている皿。
産地はオランダ。

オランダ産ピューターの配合は鉛成分が多量だったのか、光をしっとりと受け止める曇り空のような肌合いは、他の制作地のピューターとは何故かちょっと違う気がします。

古手の幅広リムは美しいですが、一尺を超える大きなサイズが大半ですので、今回のような、好みのオランダの肌合いで尚且つ28cmという径は、個人的には一つの理想のピューターです。

裏には獅子と天使の工房印。









⑨ ピューター幅広リム皿 オランダ 18世紀 28.3cm径 2.3cm高

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33cmのピューター大皿。
見た目の質感はアルミニウム製のような、軽さを感じる薄造りの大皿ですが、軟らかくはない、中位の硬さのあるピューター。

表面は無数のカトラリー痕跡に加えて、異素材の金属的な黒い付着が見られます。

リムの狭いピューター皿は、見立て盆にも人気ですが、こちらも皿というよりトレイや盆として使いたい大振りなものです。












⑩ ピューター幅広リム皿 イギリス 18世紀 33cm径 3.5cm高

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輪花形のピューターの中では個人的には初めて出会った形です。

たっぷりとした深さ、フランス的で優美なリム装飾は、ぽっかりと森に現れた小さな湖を見るような気分です。

裏側には見込みとリムを繋ぐ箇所をぐるりと修復した跡があります。











11 ピューター輪花深皿 フランス 18世紀 33.5cm径 4cm高
価格 22,000円 (税込)






特集の最後の一枚。

枢機卿の帽子と呼ばれる幅広リムのピューター大皿。
紋章に描かれた、その怪獣の何とも可愛いこと…。

まるで涙しているようにも見えます。

この枢機卿の皿は、貴族の城や大聖堂、教会から発見されることも多く、神聖でいて宗教的な美しさを放っているようでもあります。

哀しんでいるのか、喜んでいるのか、不思議な怪獣の紋章を、ただ眺めて過ごし思い耽るひとときも、贅沢ではないでしょうか。













12 ピューター怪獣紋章リム皿 オランダ17世紀末~18世紀初頭頃 37.5cm径 3.2cm高

売約済み




・今回の特集に当たって

ピューター皿の一番の魅力は何だろうと考えましたが、僕にとっては「変形したもの、するもの」なのだろうと思えてきました。

変形しやすいピューター製の皿は、異素材の器物では、まず在り得ない形や姿で残っている場合が沢山あります。

ボコボコにへこんでゆがみ、作者や使い手によるサインや誰かへ宛てたメッセージの彫り込み、落書き、カトラリーの痕跡、それに加えて錫特有の風化した鈍色の光り。

あらゆる皿の中で、これほど生活が色濃く出ているものはあるか。
生きていた人の証しがこんなにもよく見えるのは純粋な悦びです。

“落書きのピューター”なんていう企画もいつかしてみたいです。






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